What a wonderful world. きつねのこんすけ

Hosanm2007-05-23



あらためて一日を思いおこすと、たいしたことをしていない。打ち合わせの連続だった。でも、なぜか疲れている。帰宅途中、午後9時。この時間にはめずらしく、幼稚園児連れのおかあさんが乗り合わせる。始発電車は空いていた。

「おかあさん、もう一度読んで」
「だめよ○○ちゃん、ここは電車の中だからね」
「お願い。帰ったらお風呂に入って、それから、ええと、歯を磨いて、△△△ちゃん(子猫のことらしい)にいいこいいこしてからすぐ寝るから。お願い」
「じゃあね。おじゃまにならないように、ちいさな声でね。一回だけよ」

おかあさんは、女の子を膝に抱きかかえ、ささやくように絵本を読み始めた。
向かいの席から見えた表紙は、あの『きいろいばけつ』だった。
疲れていても消耗していても、もうだいじょうぶよ。とたんに、今日は最良の一日に変わった。

何年前か忘れてしまったが、知人のWEBサイトに、こんな読書感想文を書いたことがある。思い出して探してみた。

『きいろいばけつ』
『つりばしゆらゆら』
『あのこにあえた』

森山京著 土田義晴絵(あかね書房

おじちゃんこれ読んで、と知人の娘が絵本を持ってきた。あッ、きつねのこんすけだ。まだ現役のキャラクターとして健在で、読みつがれているんだ。最初にきつねの子に出会ったのは、子供が小学校に入学したばかり、課題図書だった。10数年たっても、バケツを持った得意そうなきつねの子の顔が目に浮かぶ。いまでも本棚のどこかにあるだろうか?探して久しぶりに読んでみよう…。


  • きつねの子は丸木橋のたもとでぴかぴかの黄色いバケツを見つけました。まえからバケツが欲しかったのです。ともだちのクマの子やウサギの子と相談して、一週間待って持ち主が現れなかったら、自分のものにすることに決めました。(きいろいばけつ)
  • つりばしのむこうにきつねの女の子が住んでいるらしい。きつねの子はゆうらりゆれるつりばしをわたる練習をはじめました。(つりばしゆらゆら)
  • きつねの子は一歩一歩つりばしを渡って行きます。はたしてむこう側にいるきつねの女の子に会えるでしょうか?(あのこにあえた)

いろあせない記憶、憧憬、自立、孤独、旅立ち等々、いろいろこじつけたり解釈したりできるが、このシリーズのことになると普通の精神状態ではいられないので、これ以上書かない。「もしもまだだったら、ぜひ読んでくれ!」とだけ伝えたい。『きいろいばけつ』はすでに100刷を超えるているそうだ。たいていの図書館にあるはずだ。

「きつねのこんすけ」については、これ以上書くことがない。もう一回だけ言っておこう。「もしもまだだったら、ぜひ読んでくれ!」と。