世界に冠たる日本の愚「本の再販制度」はどうなっているのか?

20、30、当たり前



東京ビッグサイトってところのIT関連の展示会で、準備も含めて五日連続で仕事をしていた。

ただ立っているのって辛いね。足がつりそうになっている人が周囲に何人もいた。自転車漕ぎで日ごろ鍛えているわたしは平気。でも、忙しいときはいいけど、暇になると退屈で何度か臨死状態になる。周囲のはげましにより何度もお花畑やトンネルから引き戻された。

同時開催として「東京国際ブックフェア」ってのをやっていた、というか本当はこちらが主たるイベントで、わたしが参加していた方が寄生しているのだが、ま、それはいいとして、いずれにしろわたしの興味は断然"ブック"の方なのであり、活字中毒者としては仕事中もそちらが気になってしかたがないのは当然で、一日に何度も彼方にふらふらと向かってしまうゾンビのごとき様は人とは思えずいとあさましけり。

で。このブックフェアも16回目とのこと。行ったのははじめてだ。いつも不思議だった。

ブックフェアって、出版社と地方の書店のBtoBの集まりじゃないのか?
どうせ本は再販商品なんだし、数社の取次とかいう名の運送屋にまかせておけばいいのじゃないのか?
そんなものわざわざ東の地の果てまで行ってやる必要があるのか?
それに本が陳列されている点数ならば、八重洲ブックセンタあたりで充分じゃないのか?
・・・・等々・・・・・・

だ。

コミケ」のようなアンダーグラウンドの場ならばわかる。でも、
あ、ここで誤解されないように言っておく。わたしはコミケに特に興味を持っていない。そりゃあ、一回だけ興味本位で行ったことはある。でも、コスプレの気も"やおい"の趣味もない。誤解しないように。

それはともかく…
ふらふらと獲物に向かって行ってしまって驚いた、R指定もない、囲いすらないホールの一角に、白昼堂々と書いてあるではないか、「20%引き」と。あれッ?新聞紙と駄本も含めてすべての本は再販指定がされているので、いかなる場合も何人こぞりて値引き販売ができないのではなかった、っけ?脱税の手練手管を考えつくしているあのアマゾンジャパンでさえ、普通の国産本は定価で売っているのだ。

わざわざ再販制度について調べはしていないけど、シバリは書店だけなのか?再販制度が文化を守るために大切だといいながら、出版社ならばいくらで売ってもいいのか?そうだよね、取次ぎと出版社の力関係しだいで、仕切り価格も違うみたいだし。それとも、ビッグサイト内は東京湾に突き出した出島状態なのか?はたまた、アムステルダムのカフェのXリXァXのように官憲も黙認状態なのか?
疑問はつきないのだ。
でもそれだけじゃない。

そうなのだ。最終日、日曜日午後遅め。それはいきなり始まる。

某弱小出版社が、「全品20%引き」の表示の"20"に赤線を引き、上部に"30"と書き足す。やがて時間を追うごとに、この連鎖は中小出版社に拡がる。やがて大手出版社のブースもこの波に呑まれて行く。突然、某々大手の前の通路に"ラウンドガール"が出現する。高く差し上げたプラカードには燦然と輝く「今から30%引き」の文字が躍る。やがて某々々大手も呼応する・・・・・。
そんなこんなで、東京国際ブックフェア会場の一角は、夕方のスーパーマーケットの生鮮食品売り場と化してしまうのだ。どうせたいした本があるわけじゃないが。

さっき、「弱小」と「中小」とか書いたけど、「うちは良書を売ってるのじゃで、そげなスーパー安売り状態は好かんのよ」と出張する硬派な出版社も多い。実はそんな出版社の本が欲しいわたしはちょっとうらめしいのだが、そんなことは、断固、おくびにも出さない。とはいえ、そこも20%引きはやってるのだが…

でもだいじょうぶだよ。
「一円たりとも一ペソたりとも、うちらは引かんけんね」という出版社もある。さすが岩波書店!日本の文化はまかせたぞ!最近、たいした本出してないけど、久しぶりにちょっと見直した。というか、彼らの目線が今でも1970年代あたりに行っていないといいんだけど…。

ってことで、再販制度にきちんと意見があるのに、検索でこのブログに行き着いてしまった人、余計な時間を取らせてゴメン。



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