ギムレットには早すぎる

別れの挨拶をする二人



出会いの後には別れがある。永い間苦楽をともにしたあの娘との別れがあった。「Cielo-Azul」を身請けしたためだ。共同生活はできないものだろうか…、と悩んだ末だ。
わたし達はそれでもよかった、でも、世間が許さなかった…。

わずか一週間の三人の蜜月だった。せっかく仲良くなったCielo-AzulとViento-Blancoなのに、それでも別れはやってくる。

「ようがすとも。そお〜んなわけ有りなら、その娘あっしがお引き受けしやしょう」という御仁がいた。
「お日柄のいい頃合に、ご近所までいただきにうかがいやしょうか」との申し出をご辞退して、ラストポタがてらお届けすることにした。決して、その他にいやしい心づもりがあったからではない!



いよいよ当日。整備と掃除は先週済んでいる。最後に隅々まで、埃を取ってやる。
たったの一週間だったが、すでに気心を通じ合わせていたビエントとシエロ。互いの今後の活躍を祈りながらの抱擁の後、『ドンナ ドンナ』を口ずさみながら、ビエント号は引かれて行ったのだ。

一緒に走った、仙川、野川、多摩川を軽くポタリング。いい天気だ。風も暖かい。そんなこんなで、もう約束の時間だ。到着してしまった。
まずは、挨拶もそこそこ、ビールでかき揚げから。今日は散歩がてら歩いて帰ることになる。じゃあ、もう一杯。休日とはいえ昼ひなか、ギムレットには早すぎるので(どこの蕎麦屋にも置いてないけど)、代わりに菊正樽酒を。蕎麦で〆て、いよいよ別れのとき。



  「The Long Goodbye」


元気でがんばるんだよ。だいじょうぶだよ。またすぐ会いに来るからね。と。・・・・・決して、またすぐかき揚げと蕎麦を食べに来ようとたくらんでいるわけでは、絶対にない。
だから、さよならは言わないよ。「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬこと」だからだ。