野川で迷って、『たか志』で迷う

Hosanm2007-12-02



穏やかな週末だ。イタリア話もちょっと書き飽きてしまった。ひさしぶりにおなじみの河川を回って蕎麦ポタ+紅葉見物。

仙川を遡って井の頭公園へ、ジブリをかすめて玉川上水へ、新小金井橋を左折して南下、野川に至る。ここで深刻な岐路に立たされる。大事な選択肢だ。今日の昼蕎麦は『みやざわ』にするか、それとも『たか志』にするかだ。

「そんなことで…」なんて言わないでほしい。今日一日を決定する重大な局面だ。

この際、両方行っちまったら…という悪魔のささやきもある。でも、おいら、ちょっとの間に掛け持ちするなんて、そんな浮気性じゃない、ときっぱり誘惑をしりぞける。(本当は、両方掛け持ちできるほど、胃が大きくないだけなんだけどね…)

今日に限ったことではない。こんな悩みは日常茶飯事だ。でも、だいじょうぶだよ、おまえは、いつも果敢に、自分で決断してきたじゃないか!!
ま、それはともかく、最終的な決め手は、どの蕎麦を頼むかを「悩みたいか否か」だ。ようするにそんな程度のことだ。

『みやざわ』で頼む蕎麦は決まっている。メニューにない、「せいろと田舎を大盛りで相盛り」でだ。だから迷いはない。

『たか志』では迷いに迷う。まず、「吟醸」にするか「ふつうの」蕎麦にするかで悩む。『たか志』というと「吟醸蕎麦」といわれるが、実は「ふつうの」蕎麦もうまいんだよ。
それに、何度か食べているとわかるけど、「吟醸」にはけっこうムラがある。たいていは飛び上がるほどうまいのだが、ぶつぶつで香りも味もハテナの時もあった。「ふつうの」にはムラがない。いつも高め安定クオリティだ。

で、今日は?今日は悩みたい感じだ…というわけではないが、『たか志』に決定。この季節、この天気だ。ちょうどこのエリアに来たのだ。きっと多磨霊園の紅葉はきれいだろうと思い立った。



多磨霊園をしばし散策。ちょうど昼だ。『たか志』に到着。さあ、悩むぞ!
つまみは迷わず「おこげ」を。さて、蕎麦だ。

さっき、「吟醸」か「ふつうの」かと書いたが、実は選択肢はもっとある。「四季の吟醸」、これは迷いようがない。いつも一種類しかなく、冬は「古吟」だ。が、土日限定「白吟」ってやつもある。「白吟」は更科のような繊細な白い蕎麦だが、更級のように淡白ではなく、噛みしめるほどに蕎麦が強く香ってくる不思議な蕎麦だ。かつ腰が強くシコシコというかもっちりしている。
う〜ん、どうしよう。

悩みたくないのならば「ふつうの」蕎麦にすればいいじゃないか!といちげんさんは言うだろう。話はそんな素人考えが通用するような単純なものでない。「ふつうの」蕎麦を選んでも悩みはつきない。『たか志』は種物も個性的で、どれもおいしいのだ。

梅山菜や梅とろろのようなぶっかけもいける。ナスのあんかけのようなちょっと変わったやつもいい。かき玉のまったり感も忘れられない。さらに、極めつけの変化球としては「胡桃ダレ」がある。

ああ、どうしよう。どれも食べたい…。毎度のことで、心千路に乱れてしとき…、新メニューが目に入る。「つけそば(海老入り)」。おばさんの(たぶん)手書きで「おすすめ」と書いてあるのが目に入る。
なぜか今日は、いままで食べたことがないものを食べたい、というやさぐれた気分。思わず「つけそば」と頼んでしまう。

で、どんな蕎麦だったかというと、…、例によって急いで食べてしまい写真を撮り忘れてしまった…、上等のすまし汁のような、上品な薄味の透き通ったつけ汁。暖かい汁にはかすかなとろみが効いている。海老は揚げていない。
蕎麦をちょっと汁につけて食べたり、どっぷりつけて食べたりしてみる。どれもいける。蕎麦湯で割って飲み干す。身体が温まる。

いいよこれも。もっと変化球で、話の種に一度食べておけばいいかと思ったら、実はど真ん中の直球だった。う〜ん、おかげで、迷いのネタがひとつ増えてしまったじゃないか。

いつの日か、人数を集めて『たか志』ツアーを企画してみたい。四人くらいで、つまみは頼まず、蕎麦だけ。一人二品として、計八種類を回し食い。あれと、あれと、あれと、…。



妄想をいただきつつ、帰路はのんびり、多磨霊園と武蔵野公園の紅葉を堪能。陽気もぽかぽか。野川を下って帰る。