都会の異次元空間にて蕎麦を食すこと

目黒の異次元空間「紫仙庵」



最後のお盆休みポタリングをきっちりしめようと噂に手強き店主と評判の『紫仙庵』をめざしていざ目黒方面に走り出すも昨日とはうって変わった暑さに加えて連日のはーどポタリングにやや消耗気味とはいえまだだいじょうぶだよとビエントブランコデロスアンデス号は順調に南東に向かって走駆し呑川緑道をとらえてひた走り続けるもやがて緑道のはて大岡山にそびえたつ絶壁の半ばであえなく馬を降りうなだれながらおずおずと手綱を引き引き登らんとすると周囲では蝉どもがおもしろおかしくいっせいに嘲笑騒がしくますます無念の感に襲われし。・・・・。

と、またわけがわからない調子で始めてしまったが、今年のお盆休みの〆として、目黒『紫仙庵』を訪問。まずは場所を確認。開店までの時間を「林試の森公園」をうろうろと散策。長年東京に住んでいながら、ご縁のなかった一角。こんなに立派な公園があるんだねえと感心する。豪華な緑だ。そのうち昼寝に来よう。

『紫仙庵』は噂にたがわず、不思議な時空間にポツリと「在る」。所望したものは「さしみはんぺん」と「十割せいろ」。どちらも個性的。噂通りのご主人と合わせておいしく頂戴する。が、なんとなく、『地球屋』を思い出してしまった。両店とも蕎麦も料理もうまい。すばらしい環境を演出できている。でも、どちらも…なんと表現していいんだろう…人に緊張を強いるというか、少なくともリラックスさせてくれないんだよね。えーと、あくまでもわたしが感じた雰囲気を伝えようとしているだけで、評価しているわけではないので、誤解をしないように。これが好きな人もいる。

「現象として」共通しているのは、店側が客にいきなり「選択肢を迫る」ということだ。『地球屋』では、着席後汗を拭く暇もなく、いきなり今日のセットメニューについて説明されてしまう。『紫仙庵』では、品書きを見る間もなくいきなり、深いバリトンで「お飲み物は!」(クエスチョンマークの入力間違いではない)と迫られてしまう。
わたしはもともと最初は○ー○なので、よしとしても…、それでも違和感がある。行き合わせた他の三組は、じゃっかん口ごもりながら「み、水を」と言っていたのがちょっと笑えた。そうだよね、飲み物メニューも出さないんだから、何があるかもわからない。

でも味はとびっきりだ。蕎麦は福井の何とかと書かれていた。この季節でこの香りこの味。十割らしくない不思議な弾力のある噛み応え。勘定時にご主人とちょっと立ち話を。夜の鴨鍋に興味津々。酒も端から飲んでみたい。今度、夜、一杯やりにくるよ。でも駅から遠い。都会の異次元空間だからなあ、しかたないか。

往路は下から攻めたので、復路は上を攻める。昨日一日すごしやすかったので今日の日差しは体の芯に突き刺さる。おい、どっかで休憩しろよ!と内なる声がしきりとうながす。と、現在位置を見ると、いつのまにか経堂の近くじゃないか…。「この暑さだものしょうがないな」。内なる声に導かれ、ひさしぶりの経堂『みず埜』の暖簾を押す。確信犯。

連日のはしご蕎麦だがしかたがない。内なる声の忠告と出会いは大切にしたい。手と顔を洗って、いつものカウンターでいつものやつでくつろぐ。この暑いのになぜか温蕎麦が食べたい。「花巻」を所望する。実はここの「花巻」、シンプルで好きなんだよ。「かけ」に海苔だけで、ネギも何も入っていない。自慢の二八蕎麦が海苔の香りと自慢の出汁の中で際立つ。添え物の山葵をときどきなめて一気にいく。汗が心地よい。

今日もいい蕎麦日和だった。今日のログはこれ。

GoogleEarth用のTRKファイルのダウンロードはここから。