いつもにまして蕎麦気分で

これが「よし木」のかき揚げだ



晴天の夏の多摩川ポタリングは、日差しからの逃げ場がなくてつらい。風の強い日の多摩川もきつい。今日は曇り。風もない。思い立って『よし木』へ。『よし木』は、分倍河原という、とても電車では行く気がしない場所にある。でもだいじょうぶだよ、わたしには自転車がある。(おまえのところから20キロ以上離れているのだから、普通はもっと嫌なはずだぞ…)

といっても、多摩川堤沿いにのびるサイクリング道路は、のんびり散歩する人と「もがき」の極致で余裕度−10%のロードバイクのおじさんの間に挟まれて、それはそれなりにポタリングしにくい。だから往路だけは多摩川サイクリングロードを使うことにする。復路は一般道を通ろう。

人も自転車も少なく、めずらしくサイクリングロードは快適だった。予想以上に到着が早そうなので、関戸橋を越えてそのまま走り過ぎる。適当なところで引き返そうと停止。ここまで来てしまったのだから、矢川『素朴庵』まで行ってしまおうか…と悩むが、初志貫徹、分倍河原方面に戻る。

それでもまだ開店前だ。店主が蕎麦を切っているのが見える。この調子では開店には時間がかかりそうだ。このあたりははじめてなので、一回りしてこよう。店に戻ると、すでに3組のお客さんで席の半分以上が埋まっている。その後も続々とお客さんが訪れ、待ち時間を聞いて数人があきらめて帰っていった。やはり繁盛しているんだ。そうだよな。この味とこの値段だもの。

かき揚げは時間がかかりそうなので、一番早そうなやつ、板わさと二色せいろを所望。今日は手伝いの人がいない。「すみません。お手伝いの方が突然来られなくなってしまって…」と。おじさん一人で右往左往している。半数以上の人がかき揚げを頼んでいる。どうせなら一緒に揚げちまえばいいのにと思うが、「よしき」おじさんはそんな雑なことはしない。オーダーの順番に一品一品ていねいに作っている。

客は誰も文句をいわない。常連さんなんだろう、とっくに食べ終わった人も、次におじさんが姿を現すまで、おとなしく勘定を待っている。いいよね。こういう関係って。蕎麦屋にはよくあるが、他の飲食店ではあまり見られない光景かもしれない。

読みかけの本があと数ページになったとき、やっと二色せいろがくる。いつもながらうまい。しかも、外一と十割のこれで850円とは。流行って当然だ。チャンスを見て勘定。

帰りは多摩川から離れて、府中の街中を走る。と、あれ、人見街道って、浅間山公園って、『たか志』のすぐそばじゃないかッッッ、と。電柱に紙が貼ってある「吟醸蕎麦、この先左」と。まだ午後二時ちょい過ぎなら開いている。「また蕎麦屋のはしごかい」という内なる声も無視して、さそわれるように左折してしまうわたし。

ふつうの出汁のせいろは『よし木』で堪能したので、ひさしぶりに「胡桃ダレ」を。
一口目。あ〜、やっぱりうまいなあ。濃厚、芳醇。そのまま手繰り続ける。最後にネギをぶちこんで、蕎麦湯で薄める。「ミシンと洋傘との手術台のうえの不意の出逢い」のように、だし汁、胡桃、ネギ、蕎麦湯の摩訶不思議なマッチング。あ〜あ、うまいなあ〜。至福の時だ。「すいませんね。おばちゃん。いつもいつも気をつかってくれなくていいんですよ。そうですか…ごちそうさま」と。今日はコカコーラだ。

なんか今日はもっと食べていたい気分だ。でもお腹はいっぱい。次を曲がると『みやざわ』だな。(先週行ったじゃないか) あ、地球屋はしばらく行ってないなあ?(もう閉まっているよ) 『徳兵衛』のおじいさんとおばあさんは元気かなあ?(もう今日はやめとけよ) 『志美津や』は通し営業だったよな。(・・・・)
大食漢のYN氏がうらやましい。

とても蕎麦な気分の一日、ひさしぶりに猛暑を逃れて、快調に50キロ走った。さて、明日はどの蕎麦屋に行こうか…。



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