時間は金で買えないけれど、本と純米吟醸と蕎麦屋酒なら買えるということなど

ダン・シモンズ「イリアム」



どれが一番くやしいだろうか?

(1) 読み始めて30%程度
(2) あと数10ページ程度で終わり
(3) 買ってすぐ

どれもくやしい。そうそう、せっかく選んで買った本を落としてしまったときの話だ。

(1)は嫌だなあ。小説ならばやっと謎が出揃って物語の全体像が見えてきそうなところだ。キャラクターに自然に感情移入できるようになっているのに。
(2)もつらい。一気に物語が進み、伏線が最後に生きてくるところだ。でも、この展開だと、ひょっとしたらバッドエンドかも?と、不安もつのっている。ああ…ッ、嫌だ!
(3)はただくやしいだけだ。でも金額に換算できるので諦められやすい。文庫か新書だったら、「まあ、だいじょうぶだよ。純米吟醸を一杯余計に飲んじまったんだ」と。高めのハードカバーだったら、「軽い蕎麦屋酒一回分か」と。…。そうなると簡単には諦めにくいなあ…。

なんでこんなこと書き始めたのか?最近立て続けにやっちまったからだ。

まず(1)。読みはじめであっさりやってしまった。
『となりのクレーマー』(中公新書ラクレ)756円也。どうしようか迷ったが、思ったほどの内容ではないし、クレーム処理物ならばもっとおもしろい本があった。買いなおしはやめ。買ったことにして、「純米吟醸」を一杯余計にやることにした。

次に(2)だ。残り20ページのところで、水に落としてしまった。これは悔しい。
スーパーコンピューターを20万円で創る』(集英社新書)714円也。わくわくしながら読んできた。その最後の章でどぼん。自宅で夜中だった。ん?詳しい状況はきかないでくれたまえ。経験者ならばわかるだろう、ページがくっついてしまう。いまさらこの時間で買いに行けるわけがない。といってもこのままでは眠れない。ページをベリベリはがしながら読み通してから破棄した。これで純米吟醸を余計に一杯飲んでやるんだ、という一念をはげみにして。(やっぱり純米吟醸に話が行っちゃうのかよ…)

(3)は高価な本だったので、ちょっとショック。
イリアム』(早川 海外SFノヴェルズ) 3,150円也。重い本なので電車の中で読んで腱鞘炎になるといけない。お盆休みに読もうと買うのを控えていた。買った帰りに車内に置き忘れた。らしい。途中の2軒の飲み屋かもしれない。「どうせお盆休みもあってなかったようなものだから、いいや」と、出会いがしらの事故にあったと思って諦める。「おかげで腱鞘炎のリスクも回避できたしね」と。いつも楽観的なわたし。こんどのチャンスは年末年始だ。きっと読んでやる。その分、純米吟醸付きの蕎麦屋を一回減らそうと固く決心をする。ただし「来月になったら」だけど、と。