蕎麦屋に似合う風景

七田の飲み較べ、ハーフなのがうれしい



2007年は永福町『黒森庵』開店の噂から始まった。「蕎麦打」を書いた出張蕎麦師、「紙筒スピーカー」の設計者でもある加藤氏のお店らしい。さっそくポタリングのついでに場所を確認。

日曜日〜木曜日、11:30〜15:00、という不思議な営業形態。なかなか時間を合わせるのが難しい。
最初の日曜日に訪問。そのホワ〜ンとした空間に一度ではまり、以来、昼酒三昧。「姫」ともここで出会い、現在に至る。資格、賞罰なし。

で、大晦日。一年を『黒森庵』で〆ることにした。

相変わらずいい感じで混んでいる。「七田」のニ種類、精米歩合65%と75%の飲み較べから。あれ?どっちがどっちだったっけ?あッ、例によって、最初の酒以外の写真を撮り忘れた…。飲んじゃったら、もうダメなわたしだ。

なんやかんや大晦日だ。一年で今日しか蕎麦を食べない人もいるくらいだ。通常の閉店時間に近くなってもお客さんが並んでいる。今年のまだやや若い「」にもアスタ・ラ・ビスタ。いつもの「黒森尻」はやめて、いい感じで退散。ごちそうさま。



ところで、蕎麦屋の客層って、どうやって決まるのだろうか?なんでこんなに違うんだろう?
今まで考えたことがなかった、そんなことを考え始めたのは『黒森庵』に出入りするようになってからだ。不思議なことに、圧倒的にご老人が多いのだ。

  • 蕎麦自体のため?
    …ないとはいえない。特に『黒森庵』の細切りは、十割蕎麦の風味を残しながら、特有のざらつき感がなく、喉越しもよく、ご老人向きなのかも知れない。
  • 雰囲気?
    …そうだね。あの独特な「ホワ〜ン」も大きく影響しているだろう。
  • 営業時間?
    …なんたって昼のみ営業+品揃え豊富な日本酒のショット売りだ。そのわりにお前はけっこう行ってるじゃないかという話は置いといて、カタギのビジネスマンにはハードルが高い。
  • 立地条件?
    …大いにある。永福町という古い住宅地のどまんなか、商店街からやや離れたところにある。ポカポカした陽気。ご隠居の散歩がてらの立ち寄りに、『黒森庵』はよく似合う。

蕎麦には散歩が似合うのはまちがいない。野川沿いの『地球屋』は、散歩途中の老(若)男女でいつもにぎわっている。府中『たか志』では、多摩霊園参りの善男善女をよくみかける。今は無き、桜の季節の半蔵門『三城』。等々。

『黒森庵』で始まって終わった一年。『黒森庵』をハブとして、いろいろな方にも(日本酒にもだろ)出会った。その他数々の店で様々な人たちと同席したのを思い出す。

小金井『みやざわ』の座敷では七五三のお祝いをしていた。下北沢『くりはら』ではおばあちゃんの喜寿のお祝いをしていた。宇奈根『山中』で幼稚園児の集団に遭遇したのには驚いた。市ヶ谷『大川や』にはタモリがいた。幡ヶ谷『ふじ多』で若い夫婦が誕生日を祝っていたし、カウンターの奥の席で別れ話をしている男女もいた。

そうそう。休日の都心に近い蕎麦屋では、10代の若者を連れた中年男もときどき見かける。酒をちびちびやりながらぼんやり、聞くともなく聴いてしまう。

「好きなものを頼みなさい」
「新しい学校はどう?」
「サッカーの試合だったんだろう?」
「ピアノはうまくなったかい?」
「天婦羅はもういいのか?蕎麦のお代わりはいらない?」
「ママは最近どうしてる?」

「田舎のおばあちゃんの所に行ってきた」
「相変わらず酔っ払って怪我してるんじゃないかって心配してたよ」
「うん、△×さんはやさしいよ」

こんな風景も蕎麦屋にはよく似合う・・・・・か?
でも、まだ、だいじょうぶだよ、おとうさん。また一年が始まる。