イタリア観光旅行(フィレンツェ[II])

ピッティ宮



ウフィツィ美術館をざっと見終えて、すでにお腹一杯。でもフィレンツェにある絵画は、まだまだこんなものじゃない。そもそも、ウフィツィだけでも・・・・・

ざっと思いつくものを列挙しただけでこんな程度はある。
・・・・・
忘れていた、これもあった。ミケランジェロ「聖家族」だ。

「筋肉質」のマリアと幼子イエスが描かれている、ミケランジェロの筋肉フェチぶりをあらわした名画として知られているだけでない。めずらしい円形のキャンバスに、どっしりした構図で描かれた傑作中の傑作だ。

予約客からちょっと遅れて入館して来たガイド付きの団体は、レオナルドやボッティチェッリに群がっている。ガイドの解説を退屈そうに聞いている団体。その隙に、ミケランジェロ「聖家族」をひとり占めだ。こんな幸せは、日本の美術館じゃあ考えられない。

画集や絵画本ではよくお目にかかっている絵だ。今回、どうしても見たかったのはこの「絵」そのものではなく「額縁」だ。額縁もミケランジェロの作。彫刻家としてより有名なミケランジェロだ。これだけでも鑑賞価値は高い。しかも、円形キャンバスの構図と額縁の装飾が一体となり、最高の聖家族像となっている。ガラス越しじゃないのがうれしい。

ウフィツィを出て、次に向かったのは、「ピッティ宮」だ。典型的なルネサンス様式の宮殿といわれている。ここにはラファエロ「小椅子の聖母」がある。キラ星の数ほどある聖母子像の傑作中の三ッ星画だ。しかも、ミケランジェロの「聖家族」同様、円形キャンバス。
せっかくフィレンツェまで来たのだ。この両傑作を見較べないでどうする。



(どちらの円が大きく見えるか?というテストではない)


ムムム…両方ともすばらしい!天才の技だ。が、ここは絵画評をするような難しい場所ではないので、「ムムム」で終わりにしておく。

しかし、この「ピッティ宮」、どの部屋に行っても、ルネサンスからバロック期の濃厚な絵画の洪水だ。もはや完全に消化不良。
部屋に入る。ぐるりと見渡す。「ふつうにすばらしい」絵を流し目で一瞥して通り過ぎる。次の部屋へ。途中からこんなことの繰り返しになってしまう。もったいないとは思うものの、打ち手の思い入れが込められた極上の蕎麦を食べ慣れてしまったら、どんなに有名店でも、商店街の6割蕎麦をあえて食べようとは思わないだろう?それと同じだ。(また蕎麦の話かよ…)

ところが不思議なもので、ふと眼を引く絵画もある。近寄って立ち止まって見る。その作家の全作品を、わたしが知らなかっただけで…なんと…なんと、超一流画家の絵なのだ!
うう〜ん、これにはまいった。思わず立ち止まって見ると、ルーベンスだった、リッピだった、カラヴァッジョだった。

絵画史にさんぜんと輝くA級画家と、その他著名ではあるが凡百の画家との違いを、これほどはっきり、感覚的に認めることができたのは、実ははじめての体験だ。「俺、美術ならば詳しいぜ」といういままでの高言が恥ずかしい。

違いがわかるようになるためには、「いい作品をたくさん鑑賞しなさい」と言われるが、まったくその通りらしい。そういえば、これほど集中して名画を見たことははじめてだ。もっと早く体験しておけば良かったな、とつくづく思う。

よし、これからでも遅くない、だいじょうぶだよ。もっとうまい蕎麦を食べよう、もっとうまい酒を飲もう…、と、つくづく思うわたしなのであった。(それとこれとは話が違うと思うが…)

ま、そんなわけで…、そう、お楽しみはこれからなのだ。