イタリア観光旅行(ローマ[III])

Hosanm2007-11-22



その後も主に教会を中心に見て歩く。どこに行っても壁から天井の隅々まで宗教画と彫刻と装飾で、病的なほどにぎっしり埋まっている。壁にはさまざまな「突起物」があるし、無意味に空いてるスペースなんてどこにもないのだ。
やがて、この手のコッテリしたものにはあきあきしてくる。宗教美術好きのわたしでさえ。

う〜ん。これは何なのだ。これほどまでして、神の御業や栄光を讃えなければならなかったのだろうか?
それとも、彼らの自我は、空間というか空白が神経症的に怖かったのだろうか?空間、空白は「無」に、「虚無」に、存在の「否定」につながる…。
だいじょうぶだよ。なんてことを考え始めると話がめんどうくさくなるので、ここでは置いておく。



早くバチカン美術館の入館待ちの列に並びたかったので、ローマ最初の食事はテルミニ駅地下のマックだった。と言っても、ローマの朝のマックには通常のメニューはない。しかたなしに、コーヒーと甘いクロワッサンだけだった。

やっと昼食。今回のイタリア旅行ではじめてのちゃんとした食事だ。
2名で、ビール×2、ハウスワインをハーフボトル、水、パン、ビーフステーキ(グリーンペッパーソース、厚さ5センチで300グラムほどあったか)、マグロのソテー。これで80ユーロ。13,000円強だ。あれ…?着いたときから物価が高いかなあ…と思っていたけど、やっぱりそうなんだ。たしかに、ワインも食事もおいしかった。でも東京より高い!?。しかも、この店でさえ、本格的な「リストランテ」の簡易版「トラットリア」にすぎないのだ。

物価のことは後日書こう。

腹いっぱいというところで、ツーリストインフォメーションを訪ねる。せっかくイタリアに来たのだから、コンサートに行ってみたい。滞在中のオペラ座は、苦手なバレー公演『ペール・ギュント』なのでパス。市北部の「オーディトリウム」で、7時30分よりオーケストラ演奏があるとのこと。そこに行ってみることにする。
オーディトリウム、その特徴的なデザインは、日本でもおなじみのレンゾ・ピアノの作品だ。



演奏はサンタ・セシリア国立アカデミア管弦楽団
指揮がジェフリー・テイト内田光子モーツアルト協奏曲全集で指揮をしていた)
客演がアレッサンドロ・カルボナーレ(クラリネット

演目は、

という渋い組み合わせにもかかわらず、とてもとても、すばらしい演奏を堪能させてもらった。オーケストラの演奏自体も力強くアンサンブルもきれいだった。

全員がのびのびと気持ちよさそうに演奏していた。これがラテンだ。聴衆も、プロコフィエフの2楽章の終わりで拍手してしまうほど熱狂的(?)だ。最後はホールを揺るがす「足踏み」でアンコールの催促だ。これがラテンだ。でも、アンコール曲は用意していなかったらしい。団員はさっさと引っ込んでしまった。これがラテンだ。

それにしても、アレッサンドロ・カルボナーレのクラリネット。音程の確かさ、音量、音色、音楽性、どれも完璧。クラリネットがこんなにすばらしい楽器だったなんて…。認識を新たにした。
もう一度聴きたくて、帰国後すぐにアマゾンでチェックしたが、残念、どれも廃盤だ。

演奏に加えて、何よりホールの音響がすばらしい。いままでもいろいろな国の有名ホールでオーケストラを聴いてきたが、このホール以上の音は聴いたことがない。

7時30分開演で終了が2時間後。
タクシーを拾い、最寄の地下鉄駅「Flaminio」へ。
・・・・・、ところが地下鉄の駅入り口が閉まっている。???。まだ10時だぜッ?あれ?
やむなく再びタクシーを探してやっとテルミニ駅に到着する。後でわかった。A線は路線延長工事のため、9時で閉鎖。あとは代替バスでカバーしているそうだ。区間工事のため午後9時で運行ストップか…あ…。
もうとっくに、おなじみになったはずだった。「そんなの終電から始発の間にやれよ!」などと言ってはいけない。これがラテンだ。
ひさしぶりのラテンだった。あらためて、その文化の底の深さに感服するわたしなのであった。

すでに夜の10時30分。夕食がまだだった。ホテルの近くで軽く食事しよう。しばしあたりをぶらつく。ここがいいぜ、と鼻が動いたピッツェリアに入る。ワインをオーダーしたあと、メニューを見ながら連れと話す。

「いい演奏だったよね。クラリネットうまかったね。名前なんだったっけ?」
「ええ〜と、アレッサンドロ・カルボナーレ」
「じゃあ、ミネストローネとカルボナーラをお願いします」
「わたしも!」

「えッ、なにこれ。うま〜い」



夢中になって写真の前に食べちゃった…


そういえば、イタリアにやって来たのにパスタははじめてだった。
こうしてカルボナーラ三昧の日々がはじまった。