自転車小説『サクリファイス』

サクリファイス (新潮文庫)近藤史恵



世に自動車やオートバイをテーマにした小説はたくさんあるが、なぜか自転車小説ってあまりないのだ。エッセイのたぐいはたくさんあるのにねえ…。マンガならばもっとたくさんあるようだが、残念ながら「茄子」以外はほとんど読んだ記憶がない。きっと海外、特に自転車大国のヨーロッパには、おもしろい自転車小説がたくさんあるのだろう。

読んだことがある小説はこんな程度だが、どれもお勧めだ。

もっとあるのだろうか?あれば読んでみたい。

そんなことを考えたのも、近藤史恵(著)『サクリファイス』を読み終わったからだ。内容は

ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ―。二転三転する真相、リフレインし重きを増す主題、押し寄せる感動!自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。 -「BOOK」データベース

かなり大げさだけど…ってことだ。

2008年に「大藪春彦賞」を受賞、「本屋大賞」で二位だったそうな。日本ではほとんど知られていないロードレースのことがわかるだけでもおもしろい。それに、ミステリーとしての最後のヒネリも利いている。だから題は『サクリファイス』なのだ…。ネタバレだから止めておく。
文庫になっているので一読をオスメス、じゃなくて、お勧めする。

眠くたく忙しいのに、読後そのまま、また『茄子 アンダルシアの夏』を観てしまったのだ。もちろんそれ以来、頭の中では忌野清志郎の「自転車ショー歌」が廻っている。

文庫版のあとがきに書いてあったのだが、著者・近藤史恵は自転車乗りではないし、生ロードレースも見たことがないそうだ。で、この臨場感。資料集めと解読、取材と想像力。逆にフィクションのすばらしさを感じてしまう。

なんてわざわざ書くことでもないよね。だって、そんこと言ったら、人を何人殺せばミステリーが書けるのかってことになってしまうし、SF作家はどうすればいいのだ・・・・・っていうか、だからフィクションはおもしろいのだ。

週末は雨だった。だいじょうぶだよ、今週末は自転車に乗って思い切り風になってや・・・・・雨らしいじゃないか。ああ、自転車、乗りてえ。



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