海外で食べたくなるもの(その弐)

定番。チビ太のおでん。



まだ前回のネタを引っ張る。

海外の長期滞在から帰国後に、あえて三番目に食べたいものといえば「トンカツ」だ。

ヨーロッパで食べる「衣のついた肉」というと、コルトレットとかシュニッツェル("shunixtutueru"だって〜エ、ああ〜難しい!北ヨーロッパ系の言語は子音と撥音が多くてタイプしにくい!)だ。

で、ようするに、そんな炒め揚げした肉が食べたいわけではない。こいつは衣が油っこいのだ。食べたいのは衣がカラッとしたやつだ。代表選手がトンカツだ。なんならビーフカツでもいい。多量の油を使ってディープフライングしたやつを…、シュニッツェルを食べながら、またまたそんなやつを夢見てしまうのだ。

それに、日本人の心の故郷、「おでん」だ。

日本人は新鮮な魚があればいいんだよ!なんて嘘っぱちだ。海が近ければどこの魚も新鮮だ。「おいしく料理した魚」が食べたいだけだ。でも、そんなの食べられる幸福な国は限られている。そんな中途半端なのはいらない。
どうせ、わけわかんない魚ならば、ミンチにして揚げて味をごまかして食べた方がいいにきまっている。

某国に、ひき肉器でおでんネタを作ってくださる日本人の御家族が居らっしゃった。神だった。思わず、めったに使わないような最大級の敬語を使ってしまうほど感謝している。あのつみれもカレーボールもさつま揚げも最高だった。久しく音信不通だ。どこでどのように暮らされていらっしゃるのだろうか…。

年に何度かコロンビアに、パックになったおでんを持って来てくれた、聖人のような人もいた。パンチパーマが仏陀のようだった。

ネタが12個ほど入っていた。これを大事に三、四回に分けて食べる。
おでんネタのあれもこれも、なんて贅沢は言わない。正しいおでんとしての核になるネタがちょっとあればいいのだ。後は、大根やじゃがいもを煮たり、ときどき手に入るコンニャク、自分で押し搾りして焼いた豆腐、ゆで卵やウインナやイカゲソ、材料に困って人参(!)入れたりしてごまかすのだ。

かように、常時おでん飢饉状態だった。だから、帰国すると必ずおでんを食べていた。

困ったことに、このおでんコンプレックスはまだ抜けていない。
朝食を買って出社しようとコンビニに入ると、必ず葛藤がおこる。「おでん買ってちゃおうかな…」と。がまん我慢。必死に堪える。だって、オフィスで朝からおでんの匂いがしていたら、後から出社した他のスタッフの勤労意欲は、ほとんど華氏零度に違いないからだ。

豚キムチ丼とどっちが朝にオフィスにふさわしい匂いかという話はここでは置いておく。

そうそう、お土産といえば、むなしかったのはパックに入った「うなぎ」だ。あんなのチマチマ分けて食べていられないしね。一気食いして後で悲しい思いをする。
酔った勢いで「どうせならうなぎ本体はいらないから、タレだけたくさん持って来てくれ」と口走って険悪になったこともある。

頼んでも誰も持ってきてくれないのが「羊羹」だ。だって重いからね。一回だけ持ってきてくれた人がいた。和菓子の上品な甘さなんて久しぶりなので、下品にガツガツ食べ終わってしまった。でもだいじょうぶだよ。このときは辛うじて理性を働かせて言わなかった。「どうせ重いなら本持ってきてくれ」とは。