練馬『ふる井』で桜切り

梅か?桜か?桃か?



夢を見る。草原に仰向けに寝転んでいる。花びらが盛んに降っている。口を開けるとニ三枚飛び込んで来る。そのまま食べてみる。噛みしめると、ほのかな香り。うまい! これって…。

眼が覚めた。「桜切りが食べたい」いきなり思う。そうだ、今日は「桜切り」を食べに行こう。でも、どこへ?
桜切りをやるときは事前に連絡をもらえるよう、宇奈根『山中』にはお願い済みだ。まだ連絡がない。それに今日は日曜日だから休みだ。

記憶を探る。そうだ、あそこなら絶対やってるはずだ。練馬というか豊玉の『ふる井』だ。一年ぶりだろうか?そういえば以前も桜の季節だった。

あれ?早く着きすぎてしまった。まだ11時だ。「シエロ」に変えてから早く着いちゃうんだよね。うっかりしていた。
時間つぶしに周囲を一回り。そうか、『法師人』のすぐ裏手だったんだ。『法師人』は何年行ってないだろうか…。『名月庵田中屋』もすぐ近くだ。どの駅からも遠くて不便な場所だけど、実は、このあたり、激戦地区なのだった。

『法師人』の粗挽きにも大いに惹かれる。が、まだ残っている後ろ髪を引かれつつも、今日は初志貫徹。『ふる井』で桜を食べるのだ。11時15分。念のために店の前を通ってみる。もう開いている。開店時間になっても開かない店が多い中、『ふる井』はいい店だ。
店の前のポールに馬をつなぎ、さっそく入店。

あった。やっぱりあった、桜切り。今日は、まだ食べていない「お昼の蕎麦三昧」にしよう。せいろを二色に替えてもらって、持ってけどろぼうの2,000円ぽっきり。


  • 蕎麦豆腐二切れ
  • 出し巻きたまご二切れ
  • 海老と野菜の天婦羅
  • 二八と桜切りの二色蕎麦
  • 韃靼蕎麦プリン

どれもおいしかった。一年ぶりの桜切り。十割も粗挽きも熟成もいいが、季節を感じさせる変わり蕎麦も好きだ。全国の手打蕎麦屋のデフォルトを、「せいろ」という語の意味を「変わり蕎麦+△○×□」の二色にするべきだ。

いいなあ、変わり蕎麦。その中でも桜切りと柚切りが好きだ。蕎麦自体も魅力的だが、両方とも茹でた後の釜湯がなんともいえない。釜湯にちょっと出汁をたらしたやつをつまみに一杯いけちゃうくらいだ。

気がつくとすでに満席。待っている人も数組。いい店が繁盛しているのを見るのはうれしい。急いで会計して退散しよう。一度、ゆっくり、夜来たい店のひとつだ。

夢のおかげで、はやばやと桜切りが食べられた。
ところで、夢の中で降っていた花は何だったんだろうか? 実は梅も桜も桃も区別がつかない情けないわたしなのだ。でも、だいじょうぶだよ。ほんとうは区別がつかない人が多いらしい。たぶんあなたも。…ね。