蕎麦を食べにアスレチックへ行ったわけではないが…

立ち食いそばの基本といえば「かき揚げ



年甲斐もなくフィールドアスレチックへ。「横浜つくし野コース」、田園都市線長津田」近くの246沿いにある。昼ちょい過ぎに駅に集合…ということは、昼食は当然あそこに決まり。小田急線の下り線には関所があって、ここを避けては通れない。『箱根そば新百合ヶ丘店。「立ち食いそば」とか「駅そば」とか「路面店」とか呼ばれるやつだ。実は立ちそば大好きなのだ。

蕎麦屋では、基本的に「せいろ」しか食べない。が、立ちそばでは「かき揚げそば」専門だ。真夏でも汗を拭きながら温そばを食べる。最低の仁義として、どんなに不味くても汁は一滴も残したことがない。立ちそばは、数ある名店中(立ちそばの名店ねえ…)、「はこそば新百合」にとどめを刺す。他の『箱根そば』店と同じ材料を使っているはずなのに、不思議なことに、新百合店のみまったく味が違う。

確かにかき揚げは、他所での作り置きではなくここで揚げているらしい。温そば用のどんぶりに乗せるとぴったりと、平たく薄くカリカリに揚がっている。
確かに作り方(立ちそばにそんなものがあるとすれば…)も丁寧(?)だ。そばも柔らか過ぎずほどよくコシを残している。かき揚げの下に、ワカメもさりげなく自己主張なく入っている。どうせあたしは日陰者。それでいいのよ。あなただけにわかってもらえればそれで幸せ!と言っているようだ(ショージ君の世界みたいだなあ)。

最後にのっけてくれる刻みネギも計ったように適量だ。さらし方もコンマ一秒の微妙なバランスを保っている。(いったん気に入ると何でも勝手に解釈して受け入れてしまう性格だ)。
汁は、関西風におもねることなく、きっぱりと男らしく関東風の「真っ黒」しょうゆ味だ。これが大切。

飲ませ友だちの関西出身の貧乏学生から聞いた話だ。上京して間もないころ、新入生歓迎コンパで終電を逃してしまい、深夜営業の店で夜明かしをした。飲んでばかりいたので満足に食べていない。お腹がすいてしかたがない。はじめて路面店に入った。出てきたキツネを見てびっくりした。汁が真っ黒じゃないか。こんな黒いの…ッッ人の食べ物じゃない!が、もともとポケットには最後の300円しかなかった。ポケット以外には…。でもだいじょうぶだよ。明日になれば親から送金があるはずだ…。

「あんなに黒いなんて…。麺まで黒く見えましたよ。でも、お腹すいてたし、泣きながら最後まで食べましたよ」だと。
おまえ、イカ墨のスパゲッティ食べたことある?とわたし。
「ああ、あれはおいしいですよね」だと。
明日、関西に帰りなさい。

9月下旬になって、予想外のこの暑さ。翌日の筋肉痛も忘れて、フィールドアスレチックのコースを回って全身汗びっしょり。ビールの幻影が目の前をちらちらする。途中何度か、メフィストフェレスバドガールのコスプレで誘惑に来たが、そこは禁欲的にこらえる。今日はめずらしく意思堅固だ。だって、この後、あの蕎麦屋を再訪しようと思っているからだ。

苦難の道を経てやっと第四楽章。南林間『TAGURU』に到着。ビールを一杯二杯。これだ、これなんだよ、と、歓喜の歌が脳内に鳴り響く。

ちょうど4時を回ったところ。この時間ならば、まだ昼限定の「手繰る膳」の範囲内とのこと。今週の「手繰る膳」の内容は、野菜ときのこの白和え、さんまの甘煮、舞茸と穴子の天婦羅、せいろ。これでたった1,350円。その他つまみ各種と「武州ささ波」「火牛」「ありがたし」などめずらしいヤツをいただく。

うまい、やすい、雰囲気☆☆☆★。中休みなしもうれしい。こんな店が沿線近くにあったらいいなあ。この時間まで「手繰る膳」があったら…。きっと頻繁に早退したくなってしまうんだろうなあ?それはそれで困る。やっぱり、ときどき来られるのがいいのだ、と自分を納得させたところで、今日は楽しかった。ご馳走さまでした。帰路はほろ酔い。ぐっすり。あやうく、新宿の人に…。(なんだ、結局、また蕎麦屋の話かよ…)