…生きていけない。…生きる資格がない。

佐藤計量器製作所製 歩数計



「年甲斐もなく」とか「いい歳して」とか言われることが多い。で、歳相応の暮らしをしようと、歩くことを生活に取り入れた・・・・・。

ほんとうはそんな殊勝な心がけからではない。ちょっとしたきっかけで、万歩計もとい歩数計を手に入れてしまったからだ。最新型だ。小型で装着場所も選ばない。ポケットに放り込んでおけばいい。

何度も歩数計を買おうと思ったが躊躇していた。何といっても「万歩計」だ。男は、ご飯を食べなければ生きていけないし、一万歩歩けなければ生きる資格がないのだ。歩数計とは、男の器というか男としての存在意義そのものが問われる、とてもハードボイルドなアイテムなのだ。ハードルの高さにずっと腰が引けていた。

とりあえずさりげなく内緒で一日持ち歩いてみた。帰宅して見る。おッ何と!9,000歩を越えている。もう少しで10,000歩じゃないか。こんな程度にプラスアルファの努力で、あの!一万歩の栄光!が手に入るのだ。

通勤とちょっとした外出をしただけでけっこう歩いているのだった。何かかなりうれしい。「Simple Body, Simple Mind」を信条としている。これだけですっかり続ける気になってしまったのだ。

翌日からは、いま何歩なのかが気になって頻繁に取り出して見てしまう。本当に単純だね。
で、この娘(歩数計ちゃんのことね!)へんに頭が良くて、向かいの席の人に話しに行ったり、プリントアウトを取りに行ったりの"なんちゃって歩き"では歩数が増えないのだ。
取扱説明書を読んでみると書いてあった。14歩までは数えなくて、15歩目からやっと"+15"と数え始めるらしい。ようするに、「その辺ぶらぶらしてカウチポテトしてても数えてやらないからね」というアッパレというか意地悪設計になっているのだ。

で、オフィスで何をするかというと、わざわざ反対方向から回って向かいの席に行ったり、プリントアウトした紙を取りに行くときはコピー機を通り過ぎてからターンして15歩を稼いだり・・・・・でもって意味もなく歩数計を取り出して数が増えているとニヤリとしたり、等々のせこい手段に出ているのだ。性格は簡単には変えられない。

こうして日々、一万歩を記録し、かろうじて男としての体面を保ち続けているのだ。が、ついうっかりまた取説を読んでしまったのだ。
そこには、「Ex(エクササイズ)モード」というやつの説明が書かれていた。こいつがやっかいだ。時速4キロ以上の"普通の歩行"のみをカウントしているのだ。
例えば「今日は楽勝でいちまんにせん歩越えだぜ」なんて自己満足していても、Exモードでは実は8,000歩程度しかカウントされていないのだ。

それならばこれはどうだ!と、休日にポケットに入れてポタリングしてみた。3時間以上走って2,000歩ほどだ…。そうだよね。歩く振動でカウントしているのだ。デコボコ道や腰を浮かせたときだけカウントしていたのだろう…。
…。
わたしの一日は歩数計のカウントのためにあるのだろうか…。

でも、ま、いいや、だいじょうぶだよ。
雨の休日は蕎麦ポタが出来ないという理由で、部屋でゴロゴロしていた。これから雨の日は徒歩で蕎麦屋に行けばいいのだ。そうすれば簡単にEx一万歩は記録できそうだ。しかも徒歩ならば思い切り酒も飲めるし!…ほんとうにこれが健康的かどうかは置いておく。

さて明日からは、男として生きる資格が手にいるのだろうか…。歩数計とHosanmの明日はどっちだ?!



hosanm@gmail.com