サンタナ ライブ・イン・ジャパン『LOTUS』
コルトレーン病が再発しているということを書いていた。コルトレーンといえば「シーツ・オブ・サウンド(Sheets of sound)」だ。音が敷きつめられている。なんて控えめな表現なんだ。正しくは、「 シュトルム・ウント・ドランク(Sturm und Drang)」。疾風怒濤だ。
疾風怒濤派のミュージッシャンがもう一人いる。カルロス・サンタナだ。
サンタナ・サウンドは、怒涛の音というか音の奔流なのだ。全編に音が溢れて途絶えることがない。ドラム、ボンゴ、ティンバレスの分厚いハーモニーとインタープレイ。ビブラートとFUZZ-WAHを多用したギターとキーボードの音の洪水。
デビュー以来、サンタナは毎年のようにレコーディングアルバムを発表してきた。
- 1969年 「SANTANA (I)」
リズムと泣き系のギターに特徴のあるラテンバンドだった一作目。 - 1970年 「Abraxas/天の守護神」
よりポップになりながらも、さらにラテンを越えてよりアフリカンになった第二作。その後のサンタナバンドの原点となったアルバムだ。 - 1971年 「SANTANA (III)」
前作のサウンドをよりアグレッシブに表現した奇跡的な第三作。リズムはますます激しくなり、粘りつくようなサンタナのギターと尖ったニール・ショーンのギターの対比がすばらしい。 - 1972年 「CARAVANSERAI」
「完成品」である三作目を越え、インストルメントバンドとして新境地を開いたコンセプトアルバムの四作目。ラテンロックからアフロリズムと進んできたサンタバンドが、ここではプログレッシブロックの境地も獲得してしまった。しかもあのリズムもあの「ノリ」も、あのサンタナの官能的なギターすらも残したままで。
あらためて、こうして並べてみると気付く。毎年、アルバムごとに新しいものに挑戦しているのだ。
『キャラバンサライ(CARAVANSERAI)』を聴いたとき"Old Santana"ファンは心配した。これからどこに行ってしまうんだろう、と。サンタナも小難しいプログレに走ってしまうのではないか、と。
ちょうどそんな時期にサンタナは初来日。ライブレコーディングを残している。『ライブ・イン・ジャパン』とか『ロータスの伝説』とか、単に『LOTUS』と呼ばれているやつだ。
武道館に聴きに行った。
いきなりメンバーの瞑想から開始。ドヴォルザーク「家路」の音が静かに出たとき、これからどうなるんだろうと不安で一杯になった。そこから圧倒的な二時間、リズムと音の饗宴がはじまった。不安は危惧だった。サンタナはプログレ風味を加えながら、あのアフロラテンバンドのままだった。
1973年7月の大阪でのライブがレコード化され話題にはなった。が…。
主に話題になったのは、演奏以外のことだった。横尾忠則の22面体のジャケットデザインだ。それを実現するために、ジャケットの製版代だけで600万円かかってしまったとか。卸値の20%がジャケット代だったとか、だ。
ギネス物のすばらしい仕事だったことは言うまでもない。
あらためて『LOTUS』を聴いてみた。「この時点まで」の、残念なことに「これ以降現在まで」のサンタナバンドの集大成だ。彼はこれを越えたことがあるのだろうか? すごいよ、これは! 何度聴いても、サンタナに一直線に寄り切られてしまう。
未聴だったら、ぜひ一聴を勧める。
問題は、「聴くと」間違いなくステージを「観たく」なることだ。残念なことにこのライブの映像は残されていない。でもだいじょうぶだよ。ぴったりの代替品がある。それが・・・・・。
続きは次回。