映画化と漫画化

デビルマン最高のキャラ「妖鳥シレーヌ



デビルマン』を地上波で放映していた。

怖いものみたさ。つまらないもの見たさで、また見て再確認してしまった。いままで劇場で見た映画のうち、ワースト1だ。10億使ったそうだが(実は3億だったという疑惑もある)、公開当時から評判は最低だった。(そんなら、そもそも見に行くなよ!)

「売り」にしようと目論んでいたらしい特撮も、PS2あたりの一昔前のロールプレイングゲームに出てくるアニメ程度。牧村夫妻を演じている宇崎阿木夫妻の素人芝居もひどい。そんなに暇だったんだろうか? 「あの」妖鳥シレーヌ役をやっていた、誰だか知らない女の人は演技以前の問題。それに何で豪ちゃんあそこに出てきたの…。

この手の実写版って、原作がビジュアルで、すでにイメージが固まっているだけに難しいよね。よほど金と時間と人材をかけないと。

数ある漫画の中で、永井豪の『デビルマン』原作はまちがいなくベスト10に入る出来だ。
デーモン達の造詣の見事さはもちろん。ヒロインの牧村美樹があっさり殺されて生首になってしまったり、少年漫画の常識を次々とぶち破ったバイオレンスに満ちた展開で、連載中は話題にこと欠かなかった。(ちょっと違うか…、ヒロインは美樹ちゃんではなく飛鳥了だったね)

実写版『鉄人28号』もひどかった。そもそも正太郎君のイメージが違い過ぎる。半ズボンならば、誰でも何でもいいわけじゃない。あれでは「ショタコンの方々」も不満だったろう。それに、鉄人もブラックオックスももっとカッコはずだ。35万円のこっちの方がすごいぞ。

漫画に限らない。おもしろ小説の映画化も悲惨だ。
うっかり、DVDで『大帝の剣』を見てしまった。最後まで見続けるのに忍耐が必要だった。そもそも、夢枕獏の小説は漫画のようなものだ。いやこれも違う…、漫画を越えるおもしろさを持つ小説だ。映画化、しかも実写にしてはいけない物の筆頭ではないだろうか。しつこいようだが、この程度のスタッフと予算では。

山田風太郎魔界転生』は三度も映画化された。どれもひどい出来だった。(こりずにその都度見に行く奴もいる) 頼むから、おもしろフィクションは映画化しないでほしい。

でも、だいじょうぶだよ。ビジュアル化がだめなケースばかりじゃない。
山田風太郎といえば漫画化された作品も多いが、石川賢の『魔界転生』は傑作だった。ただ、原作とは大幅に話が違っているけどね。おもしろけえば気にしない。
原作に忠実な風太郎作品といえば、“せがわまさき”による『バジリスク甲賀忍法帖 』だ。アクの強い風太郎キャラクターを描くには、せがわまさきのデフォルメたっぷりの画風がぴったりだ。夢枕獏餓狼伝』の漫画化が板垣恵介以外に考えられないのと同じ理由だ。

おもしろフィクションの漫画化ならば、結構いける作品があるのに、映画はだめだ。好き者がひとりでしこしこ、自分だけのテイストで、納得いくまでの長さで書いていられる漫画。制作費という「資本の原理」と戦いながら、2時間程度にまとめ上げなくてならない映画。その違いなのだろうか。
がんばれ、映画。