「三たて蕎麦」がほんとうおいしいか?

菊姫 黒吟 吉祥寺『中清』にて



どうしたんだ?最近、蕎麦屋に行ってる回数が少ないんじゃない?というメールをいくつかもらった。だいじょうぶだよ。書いてないだけで、ちゃんと行っている。

今日は、吉祥寺『中清』に行った。ビールを飲んでいると、ご亭主が一升瓶を持ってうれしそうに出てきた。
「これさあ、最後なんだけど飲んでみない?一本3万円だったんだけど…。高いからみんなに原価で飲んでもらってるの。一合だとそれでも3千円しちゃうから、半合で飲んで貰ってるんだけど、最後のところ、どう?」
見ると、おッ、『菊姫の黒吟』じゃないか…!飲む、飲む、飲む、と三つ返事で、最後の一滴まで絞って半合+αを喜んでいただく。菊姫好きとしては一度飲んでみたかったんだよね。

で、どうだったのかといういうと、「クウ〜ッ」だった。
「ね、ねッ、いいでしょう!私も一度飲んで見たかったんだよ。今度『菊理媛(くくりひめ)』買ってみようと思うんだけど。5万円だって。でも、20人で一人半合なら、2500円で試せる!どう?」
否はない。是ッ〜非、やりましょう。と。
「またァ、押し売りしてるんだからァ」と厨房で奥さんの声。いいなあ、この店、大あい好き。常連の「詩人」氏との話も楽しかった。

で、かんじんの蕎麦は、今日も「古いのあります?」と粗挽きを所望。『中清』はうどんと蕎麦をあわせて5〜6種類を常時打っている。どれも一級品だが、その中でも、実は「古い蕎麦」がうまいのだ。

9月になり新蕎麦の季節がはじまっている。でも、新蕎麦が絶対的にうまいわけじゃない。一般的に、香りはいいが味が浅いと思う。だから、11月になってしっかり味がのるまで新蕎麦と名乗らない店もある。
営業的には「新蕎麦」の一文字は大きいと思うが、蕎麦好きの間では、もはや新蕎麦伝説は壊れようとしているのではないだろうか。食べ較べるとわかる。実は、きちんと保存された「ひね」が、香りも味も、蕎麦らしくておいしいんだよね。

いやいや、そんなあたりまえの話じゃない。そもそも、うまい蕎麦の条件は「三たて」と言うが、本当にそうなんだろうか?挽きたて・打ちたて・茹でたてのことだ。
冷凍保存ができなかった時代はそうだったのだろう。保存技術が発展したいま、それでも三たてがおいしいのだろうか?

いま、密かに「古い蕎麦」がはやっている。少なくともわたしの周りの、それも一部でだが。古い蕎麦って表現が悪いね。「熟成蕎麦」と言い換えよう。打った後(!)、数日間じょうずに熟成させた蕎麦。蕎麦の常識を根底からくつがえすこれが、風味があって、じつにうまいのだ。ただし、古ければ何でもいいわけではなさそうだ。蕎麦粉、挽き方、打ち方、保存方法、期日、等々、いろいろな条件がそろったときの産物なのだろう。

やがて、「何年のどこ産の蕎麦粉をどうやって寝かせて、何日前に打った蕎麦」が最高!というような話がされるときがくるかもしれない。

ちなみに、心配してくれている人たちへ。(興味がない人には、申し訳ない。読み飛ばして欲しい)
8〜9月はこの程度は蕎麦屋に行っている。休みが多かったので、わたしとしては、逆にハイペースだったかもしれない。

09/17(月)吉祥寺『中清』 09/16(日)幡ヶ谷『ふじ多』 09/15(土)宇奈根『山中』 09/09(日)石神井公園『菊谷』 09/08(土)府中『たか志』 09/03(月)永福町『黒森庵』 09/02(日)分倍河原『よし木』、布田『徳兵衛』 09/01(土)小金井『みやざわ』 08/28(火)九段『大川や』 08/27(月)神田『眠庵』 08/26(日)幡ヶ谷『ふじ多』 08/25(土)宇奈根『山中』 08/22(水)練馬『野中』、吉祥寺『中清』 08/19(日)目黒『紫仙庵』、経堂『水埜』 08/18(土)下北沢『くりはら』 08/15(水)豪徳寺『あめこや』 08/14(火)分倍河原『よし木』、府中『たか志』 08/13(月)幡ヶ谷『ふじ多』 08/12(日)小金井『みやざわ』 08/11(土)宇奈根『山中』 08/09(木)新宿『吉遊』 08/04(土)練馬『ふる井』

どこも個性的でおいしいから困っちまう。