『酒場のキリギリス』のことなど

Hata La Vista, Baby !



三日にわたり、いつもと違うテイストのものを書いてしまった。何にでも理由がある。これにも理由がある。偶然がいくつか重って必然となる。転載せずにはいられなかった。

ある業界の月刊誌の一定数のページを記事で埋める、という仕事を押し付けられたことがある。ずいぶん昔のことになる。数字中心の月刊誌だったので、数字の裏付けとなるような海外情報や動向を書くのが主となる。が、それだけでは与えられたページが埋まらない。

毎月欠かさず出版しさえすれば、それ以外の細かい記事内容については野放し状態だったのをいいことに、好き勝手なことを書いていた。ひそかな趣味としている心理学から、人がいつも発信している「ノンバーバル(非言語的)なメッセージ」を適当に解説した連載など、業界とはまったく関係のないことでページを埋めていた。もちろんちゃんとした業界分析記事も書いていた、ということはこの際自己弁護しておく。

それでもネタに詰まった。その他の仕事もあり、これだけにかかわっていられない…。で、突然思いつき、なにをとち狂ったか、大胆にも『指輪物語』という短編小説を連載しはじめてしまったのだ。業界の情報誌でだよ…。

全部で7、8編を連載したか? そのうちの一編が『酒場のキリギリス』なのだ。幸い、生活の軸足を海外に置くことになったと同時に、月刊誌も休刊ということになり、やっとその任を免れた。

で、偶然が重なった話だった。三つある。

どうしても参照したい書籍があり、本棚の上、誇りだらけのエリアを探索していた。と、見つけてしまった。ちゃんと取っておいてたんだねエ、その月刊誌を、きちんと。全部じゃないけれど。(それは「きちんと」とはいわない)10日ほど前のことだ。

当時その月刊誌に書いていた原稿がご縁で知り合った方が退任する。ご苦労様会をやるので出席せよ、という連絡を貰ったのは7月早々。否のわけがない。酒を飲む話だ。昔なつかしい面子が揃いそうだ。そうでなくても、大恩ある人だ。仕事を一緒にさせてもらったこともある。原稿もいただいていた。
行く、行く、絶対行く。と、二つ返事で。仕事なんて放っておけ。

もう一つ。『酒場のキリギリス』の登場人物のモデルとなった一人。その訃報を受け取った。一週間前だ。知り合って何年になるんだろう。けっこう気ままに生きてきたわたしが、いつもうらやむような気ままな生き方をした奴だった。
時たま連絡を取り合っていた。たわいもないことをいいあっていた。でも、なぜか、もう20年以上会っていない。でもだいじょうぶだよ。あの世で会おうぜ。またおもしろおかしくやろうじゃないか。

じゃあな。アスタ ラ ビスタ ベイビー!