Lazy Hazy Crazy Days Of Summer

ナット・キング・コール



もうすぐ夏がくる。しばらく、汗ばむ季節が続く。暑いのは嫌いだ。いや違うな。暑い季節に、コンクリートに囲まれた都会にいて仕事をしているのは「嫌い」だ。これが正しい言い方だ。3ヵ月間辛抱すれば、またいい季節がやってくるということはわかっている。心ではわかっていても、夏はいやだと身体が拒む。

夏の刺すような光は少しずつ身体をついばむ。コンクリートに反射して心を蝕む。アスファルトの照り返しは一歩を阻む。建物から吐き出される熱風に気持ちは黄ばむ。クーラーを付けっぱなしで駐車中の車に気色ばむ。(おまえはうわばみ)

以前も書いたが、長年滞在したコロンビア・ボゴタ市はアンデス山脈の盆地、高度2600メートルにある。気温は10〜20℃平均14℃と、とても過ごしやすい。常秋の街だ。しかも赤道のちょっと北側に位置するので、乾季と雨季がある程度で、温度は通年変わらない。そんなところでしばらく過ごしてしまったので、下界の東京に戻った最初の一年はほんとうにつらかった。

しかもなぜか、このくそ暑い東京で、男たちはスーツにネクタイだ。黒っぽいスーツにネクタイをきちんと締めて、猛暑の中を涼しい顔で闊歩している男たちがいる。つくづく思った。こいつら「プロの勤め人」だなあ、と。

もちろんわたしは、上着をかかえ、ネクタイをだらしなく緩め、袖を捲り上げて、「ばみ」つつ、だらだらと歩いている。

ところで、「ばむ」っていやな音(おん)だよね。それにいやな単語ばかりに付けられている。どれも、少しずつ消耗させられていくようなニュアンスがある。一気に持ってってくれなさそうなところが、いやらしい。
今年も徐々に「ばまれ」ながら、秋の訪れを心待ちにするのだろう。

でもだいじょうぶだよ。猛暑の東京に少しでもなれる方法ならばひとつ知っている。仕事中よりも、もっと暑い思いをしてしまうことだ。例えば、炎天下に自転車でポタリングをする。それも思い切りハードに。公園で水道を見つけるたびに、頭からかぶってしまうようなハードなやつをだ。数回、こんな暑い思いをすると、身体が暑さになれてしまう。ただし、どんどん水を飲む。風を切って走りつづけていると、うっかり水を飲み忘れる。水分が切れると、脚が攣りやすくなる。CrazyなものにはCrazyな方法で対処するのがわたしのやりかただ。(利口なやり方じゃないし、あまり身体によさそうじゃないな、おい!)

そういえば、「Lazy Hazy Crazy Days Of Summer」なんて曲があった。ナット・キング・コールが歌っていた。猛暑の日って、ほんとうにその通りだ。
で、ナット・キング・コールといえば…。