情報収集の方法 すばらしい新世界
学生のころから、夢想していた未来がある。データベース化された情報と、その検索システムだ。
記憶力には自信がないので、情報自体を蓄えることはできない。しかし「どこにその情報があって、どうやって取り出すか」程度のことならば覚えていられる。
そこで「データベース」と「検索」だ。
コロンビアを中心として海外に10年近く滞在していた間は、コンピュータはおろかキーボートにも触ったことがなかった。帰国後、ひさしぶりにコンピュータに触れたときは感動した。かつて、こんなふうになると、こんな機能があればいいな…と思っていたことが、ほとんど解決されていたのだ。
その「こんなふう」のひとつが、膨大なコンテンツのデータベース化と検索システムだった。
そうだ。思ったように知識を蓄えることができなかったので、せめて、蓄えられた知識を的確に探し出すための、情報収集の方法を持てればいいな、と思っていたのだ。
そして、インターネットの膨大なデータ量を知り、検索エンジンという概念を知って狂喜した。やっと情報収集の方法を手に入れたのだと。
ハマった。そしてそのまま現在に至る、のだ。
それから10数年がたつ。インターネットの黎明期から現在まで、主に付き合ってきた「情報収集の方法」をレビューかたがた、忘れないように記録しておくことにしよう…。
この手の話に興味のない方、今日はここでお終い。明日はまた違った話題にしよう。では、お休みなさい。よい夢を。
それはYahoo!からはじまる。
- Yahoo!インデックス
最初は、人手によるインデックス化からはじまっている。しかし、圧倒的に情報が少なくいつも不満だった。また、インデックスしている人の顔が見えなくて、情報精度には疑問が多かった。 - ロボット型検索エンジンの夢の島
クローラーにより自動収集されたページは、まさにゴミの山。役にたつ情報に到達するまでに、いったい何回クリックしたのだろうか。混沌としたすごい時代だった。 - インターネットのコンシェルジェ
情報のゴミの山の中から、きらりと光る情報を集めて教えてくれる達人/目利きに、有益な情報の選り抜きはおまかせ。情報収集は主にメールマガジンに頼る。コンシェルジェ各人の顔が見えるので、情報精査の問題も解決されていた。個々人のスキルに頼っているため、唯一で最大の問題は「情報量」。 - Google登場
これまでのインターネットの歴史は、Google「以前」と「以後」に分けられるだろう。
検索結果の表示順位は、Googleによって編み出されたリンクポピュラリティ、つまり、いかにたくさんの被リンクが張られているか、および、それを含むページランキングが大きく影響している。これはすでに周知のところであり、確かに頷ける理屈だと思う。 - SEOというスパム行為
Googleによる検索結果の表示順があまりに適切だったため、「SEO」という手法が一般的になってしまった。すばらしいアルゴリズムによる、人間の主観を排除した、検索ロボットによる自動的なページ収集だからこそ、Googleが表示する順位は納得できた。
しかし、SEOとはそれを意識的に捻じ曲げることでしかない。かくして、世間には「SEOというスパム」行為が溢れることになる。
さらに、Blogというノイズ、トラックバックというスパムも加わり、検索エンジンに以前のような精度は求められなくなってしまった、と強く感じている。 - ソーシャルメディアの登場
Googleに代表される検索エンジンに致命傷を与えたのは、ソーシャルメディアの登場だ。
ロボットによる自動的な情報収集ではない。コンシェルジェたちによる「上から与えられる」情報収集でもない。横並びのフラットな人間関係からの口コミ情報だ。そして、人間は口コミ情報に踊らされやすい。
企業サイトがSEOという検索エンジンスパムに邁進している間に、ユーザーはビールスに空気感染することに慣れてしまった。 - 専門化による限定された母集団による情報発信
ソーシャルメディア巨大化の弊害がはじまっている。あまり巨大化し情報が薄まってしまったのだ。ということは、また、あの玉石混交の時代に逆戻りするということだ。
疎い分野なので詳しいことや実際例は知らないが、情報の夢の島化を防ぐために、専門により限定された母集団しか情報発信ができないSNSが増えているそうだ。
再びコンシェルジェの時代が来ようとしているのかも知れない。以前と違うのは、そのコンシェルジェが座っている場所が雛壇ではなく、自分の席のちょっと先、ということだけだ。
Googleによる、破壊的なイノベーションの後、大きな進歩はない。Google社もテクノロジー面でのイノベーションよりも、実業面での小変革にシフトしているようだ。検索エンジン界は低迷している。
でもだいじょうぶだよ、予感がする。極めて近未来に、インターネット界を一気に変貌させるような「破壊的なイノベーション」がやってくる、と。そしてそのきっかけは「検索エンジン」ではないかと思う。
それが再びGoogleの手によるものかどうかは、かつ、あかるい未来なのかは不明だが、次のパラダイムシフトは、すぐそこまで近づいているような気がする。