普通救命講習を受講してよきサマリア人と化す

AED(自動体外式除細動器)



わけあって「普通救命講座」ってやつを受けてきた。近所の消防署で4時間のコースだ。いろいろ知らないことがあっておもしろかった。

例えば、人工呼吸。
救命手当の代名詞は人工呼吸だと思っていた。でも今は違う。人工呼吸はとても微妙な救命措置なのだ。B型肝炎C型肝炎エイズ等々。特に粘膜の直接の接触による感染症が恐いからだ。

消防署に着く。教習のテキストと一緒にマウスピースを渡される。人工呼吸用携帯マスクだ。一方弁がついているので呼気や嘔吐物が逆流しないし、真ん中の大きいビニールが直接顔が触れるのを防いでくれる。もちろん感染症の予防措置のためだ。
このマウスピースを持っていなければ人工呼吸はしなくていい。むしろ、しないことを勧められる。

止血もそうだ。
手足からの出血の場合、心臓よりの箇所を縛って血が流れないようにするように習った気がする。これも違う。今は"直接圧迫止血法"だ。出血部位をガーゼやタオルなどで直接強くおさえて出血を止める方法だ。

この場合も、相手の血液に直接触れないように、ゴム手袋やビニール袋の使用が勧められる。それくらい感染症に注意が必要なのだろう。

心肺蘇生のために最も重要なのが胸骨圧迫だ。"心臓マッサージ"という通称の方が一般的だが、正確には"胸骨圧迫"という。ちょうど乳頭の中間にある胸骨を手掌で規則正しく押してやる。一分間に100回程度、胸が4〜5cm沈むまで。けっこうな力がいる。

「肋骨?ニ三本折れても仕方ありませんね」と教官が不敵な発言をする程の力だ。なんてハードボイルドな奴!ってわけじゃなく、「よきサマリア人法(Good Samaritan Law)」ってやつだ。
そもそもあれは"マッサージ"なんていうおだやかなものではないね。

胸骨圧迫により肺が動くことが多いのも、人工呼吸は無理にやらなくてもよいということの根拠になっているようだ。確かにこんなに強く胸を押されればそうかもしれない。

講習のハイライトは"AED(自動体外式除細動器)"の使用法だ。
AEDって、電気刺激で心臓の動きを強制的に正常に整えてあげるものだと思っていた。が、違う。一時的に「心臓の鼓動を止めてしまう」器械らしい。

そうか、だから"除"細動器というのだ。

脳からのきまった指令で、心臓は規則的な鼓動を繰り返している。ところが、間違った指令や複数の指令が同時に行ってしまうと、心臓は正確な大きい鼓動ができなくなって、無秩序に震えてしまったり、動きが速すぎてカラ回り状態になってしまう。つまり"細動"してしまうのだ。

その細動を除くために、AEDを使って一瞬心臓を止めてやるらしい。"止める"という荒療治をしてから、胸骨を定期的に圧迫して心臓に規則的な鼓動を与えてやるのだ。
そうだよね。かねがね不思議に思っていたのだ。何で心臓に一瞬だけ電気ショックを与えると蘇生するんだろう?って。

とても勉強になった。資格とか賞罰の"賞"のなかったわたしも、これで栄えある「普通救命講習の修了証取得者」の栄冠に輝いてしまったのだ。もはや"よきサマリア人"の仲間入りなのだ。有効期間は三年間だけなんだけど…。もう身辺で何が起こってもだいじょうぶだよ。

せっかく覚えたのだからぜひやってみたい、使ってみたいと思う。そんな気持、教官はお見通しらしい。「心肺停止している人以外には、AEDも胸骨圧迫も絶対にやらないでください」、だと。

というわけだ。ご入用の際はぜひメールで、または携帯へご連絡ください。さっそく応急処置にうかがわせていただきます。

でも、どうでもいい役立たずの話しか書かないことを旨としているこのブログ。ひょっとして今日、はじめてちょっとは役に立つ事を書いてしまったかも。と、反省しきり。ま、たまにはいいだろう。



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