まだ『秒速5センチメートル』

Hosanm2008-06-03



秒速5センチメートル』にはまり続けている。また観てしまった。細かい、しかも琴線に触れるこだわりが快い。

小道具の使い方がうまい。電話の使い方など観ていてうなってしまう。
第一話。舞台は東京から栃木。たったそれだけの距離なのに、携帯のない時代の二人の遠さ。
第二話、舞台は種子島。誰に出すあてもない携帯メール。果てしない宇宙への孤独な旅。
第三話、東京。携帯に出ないという選択。

同じ場所が何度か出てくる。しかし、その度に構成も構図も違っている。物語中に三度出てくる小田急線の踏み切りの使い方など、ぞくぞくしてしまう。

色の使い方も見事としかいいようがない。何度か出てくる同じ場所なのに、色調が微妙に違うのだ。彼/彼女のそのときの心象風景にぴったりだ。小田急線の踏み切りも、岩舟からの帰りの朝の桜色をした雪景色もそうだ。
種子島のロケット雲が左右に分ける空の明るさの違い。その瞬間、少女は気付く。

駄目ダメだめ!この手のやつには弱い。『きいろいバケツ』と同じだ。冷静ではいられない。だからもう、この話はやめておく。

でも、10代ってこうなんだよね。20代ってこうなんだよね。ちょっとしたきっかけで世界が変わってしまうのだ。ちょっとしたきっかけで、男と女の違いやとりまく世界自体の不条理さに気付いてしまうのだ。

なくしてしまった手紙と、あえて渡さなかった手紙。
守りたいと思う少年と、この先もだいじょうだと思うし…という少女。
少年は水素原子にすらめったに逢えないような空間に何かを求めて行ってしまう。逆説的にだが、少女を守ろうとするために。そして少女は「その瞬間」にそれがわかってしまうのだ。彼は遠くに行ってしまうということが。
男ってこうなんだよなあ…、女ってこうなんだよなあ…。近くて圧倒的に遠い。

雪は秒速何センチメートルで降るのだろう…。